PPAPとNBK

ネット発の音楽ネタのブームというものに懐かしさが…。

 

去年の11月初旬。

「ピコ太郎?新手のユーチューバーかな…興味ないな」

という感じで、話題になっているけどたぶん僕の好みのネタじゃないだろうと思って見向きもしなかったんですが、中旬くらいに3歳の姪が30分近く散歩中に疲れも忘れて振り付きで唄い続けているのを見て

「このプリミティブさは何事だ?」

と気になりまして。

 

そうだ、オケを作っているプロデューサーは誰なんだ?とまずは「ピコ太郎」で検索、底ぬけAIR-LINEというコメディアンコンビの古坂大魔王が「中の人」であることを知りました。

底ぬけAIR-LINEは音楽に絡めたネタであるあて振りシリーズが楽しいんですが、「テクノ体操」シリーズのようなインストラクターがレクチャーするていで変な事をしたり相棒にやらせたりする、レクチャー芸(←勝手に命名w)が印象に残っています。

「しゃべくり007」という番組に古坂氏が出演した際に披露した「和田アキ子のモノマネを教える」というネタもこれの流れだと思います。

ピコ太郎のギャグにも通じるところなんですが、基本的にボケ倒してそれが当たり前ですという顔をしてボケっぱなしで終わるので、ツボると楽しいんですがノリ切れない時はとことんノレないというピーキーさを感じました。個人の感想です。

で、この方は00年代からノーボトム!という音楽ユニットもやっていらっしゃってこれは’90s以降な感じのダンスミュージックのスタイルを持つテクノで、アンダーワールドやケミカルブラザーズ、プロディジー辺りの雰囲気を持つサウンドに、日本の民謡の要素を加えたものでした。キャッチーでかなり面白かったです。

 

このあたりの音楽活動については氏のブログのこのエントリが素晴らしいです。

camelletgo.blogspot.jp

ノーボトム!は当時知らずに友人に誘われてクラブへライブを見に行ったのですが、場内を底ぬけAIR-LINE古坂大魔王氏に似た人が忙しく歩き回っているのを見て

「底ぬけの古坂さんみたいなスタッフの人が居るよ?」

と友人に訊いたら本人だと教えてもらい、驚いた記憶があります。

この体験はまさに今回のピコ太郎の正体を知ったときと同じで、またこの人にやられた!wてな感じですw。

 

「ロミータ・ハシミコフ」や「べったら漬けが大好き」あたりの急にアゲアゲサウンドのパートに突入する感じ、クラブでぶち上がりそうですね。

「ロシアじんロシアじんロシアじぇん…」のくだりはアンダーワールドボーン・スリッピーを思い出したんですが、音楽寄りのネタでくると思わずニヤリとしてしまいます。

発売されたCDの限定版に付いているDVDでは、youtubeでお馴染みのミュージックビデオのほか、振り付けのハウトゥービデオ(独りですが先述のレクチャー芸の流れですよね)やロングインタビューといった真顔でボケ倒す系のギャグも収録されていたりして、お笑いネタも豊富です。

 

PPAPのヒットは外国特派員協会でのインタビューによれば、若い子向けの音楽を作っていたピコ太郎の中の人やその友人達のファンによるビデオへのアクセスが集中していた下地があり、この時点でヒットしていたといえるとのこと。

それをジャスティン・ビーバーが見つけてフェイバリットビデオだとツイートしてさらに大騒ぎになったとのこと。

(ちなみにこの外国特派員協会でのインタビューの動画を見たんですが、コメディアンということもありギャグを必ずねじ込んでくるんですけど、なんかもうDVDに収録されている例のロングインタビューみたいな空気になってきてですねw、途中からはこれって実は壮大なジョークなんじゃないかって気分で見ていましたw。)

 この時にはすでにPPAPを見た人々によるヘビメタやマサラテクノ等のジャンルを超えたアレンジ、歌ってみた・踊ってみたなどのカバー動画が次々にアップされていて「祭」状態になっていたんですね。

 

 

僕は昔この流れに似た現象を間近で見た覚えがあります。

それが2003年に2ちゃんねるから「祭」が始まった「日本ブレイク工業社歌」です。

作者のmanzo氏は作詞・作編曲を行う音楽家ですが仕事が減っていた時期にこの解体業者である日本ブレイク工業で登録社員として働いていたそうです。

コミックバンドを組んでいたこともあるという古くからの友人である営業部長から、面白い社歌を作ってくれないかと依頼を受け、それなら現場の機材名を必殺技のように叫ぶロボットアニメ風でいこうとちょっとジョークノリも入り、本気で遊びながらもプロの技で仕上げたのがあの曲だったというわけです。

これはブレイク工業の営業時に企業に対して配布していたCD-Rに収録していたということで、一般流通はせずサイトを開くと流れるのを聞くくらいしか曲に触れる機会はなかったらしいです。

しかし、10月に放映された「タモリ倶楽部」の「マイナーキャンペーンソング大賞」という回で取り上げられたのをきっかけに2ちゃんねる等で話題になります。(2ちゃんねるタモリ倶楽部のファンも多かったかも)

サイトにアクセスが集中しすぎたのを受け12月には急遽CDが発売されます。

 

その後2ちゃんねるDTM板には「日本ブレイク工業」『社歌』をリミックスしよう! 」が立ち上がるほか、イラストなどの創作系スレッド、音楽全般を扱うスレッドを初め、ほぼほぼすべての板に日本ブレイク工業社歌に関連したスレが立ち上がり、創作系のスレッドでは社歌の二次創作物が次々にアップされていきました。

この辺りのさわりはwikipediaが分かりやすいです。

日本ブレイク工業 - Wikipedia

 manzoさんは謎の作編曲家・歌手にして契約社員、萬z(量産型)としてテレビにラジオに雑誌にと取材を受けまくってました。

 

2ちゃんねるでは複数スレッドを巻き込んで1つのネタで盛り上がる状態を「祭」と呼び、まとめスレッドやまとめサイトで記録を残す有志も現れてカオスな現場の状況を整理して保存する流れが起きます。

最近のように書き込みを抜粋してブログのていで公開するということはなく、基本的にはスレッドへのリンクと、そこでアップされたものを別途上げていくか、アップされたのと同じリンクを貼るか、というところだったと思います。(無料で大容量のレンタルサーバも少なくてね…)

ちなみにwikipediaの情報も有志に精査された編集が行われているみたいで、かなり正確な情報です。NBK社歌ファンの合言葉は「強力サポートいたします」(歌詞より)

 

余談ですが僕は当時、ファミコンサウンドを作るDTM寄りのツールを手に入れてその練習をしていました。 

好きなゲームミュージックなどのアレンジをしていたのですが、このツールの情報交換の場がその頃は2ちゃんねるのスレッドだけで、そこでツールのバージョンアップも次々に行われていたこともありそのスレをよく見に行ってました。

で、たまたま目に入った「「日本ブレイク工業」『社歌』をリミックスしよう!」スレで練習がてら打ち込んだファミコンアレンジをアップしていった感じです。

文字通りブレイクした瞬間は見逃したんですが、まとめ記録でさかのぼってあれこれ見まくりました。

  このときのファミコン版NBKは拙サイトにおいてありますが、後に発売されたmanzoさんの公式コンピ「ブレイク祭り」にも応募しまして収録されています。

ファミコンを鳴らすことが可能なデータで演奏したある意味本格的な音声がユーロビート版やマーチング版等に混じってしれっと収録されているCDが新星堂とかに並んでいる。っていう状況を見て(あとインデックスに自分の名前も載っているのを見て)店頭で猛烈にニヤニヤした覚えがありますw。

閑話休題

 

manzoさんはその後音楽の仕事の依頼も増え、現在もアニメや舞台のサウンドトラックや主題歌などのお仕事を忙しくこなしていらっしゃる感じです。

NBK社歌を歌う謎の契約社員兼音楽家、萬z(量産型)というキャラもいまやなつかしですし、すでに中の人であるmanzoさんはさらにその中の人である坂下正俊氏との関係を明らかにしています。

 

 

そんな感じでピコ太郎というキャラが今後どうなるかは分かりませんが、でもピコ太郎をはじめとして楽しい体験をさせてくれた古坂大魔王氏のお仕事もお忙しくなられることを願っております。

 

それと、ピコ太郎というキャラクターは2000年代くらいからの持ちネタのひとつだったそうなんですが、ここへきてそのネタのビデオクリップを作るのってどういう感じのお仕事だったのかなってちょっと興味があります。

動画サイトでの活動をするキャラクターとして選ばれたのかな。

ご存知のとおりyoutubeはカバー動画にもオリジナル元の広告リンクが自動的に用意され、広告収入がオリジナルの権利元に入る仕組みが整っています。

カバーして遊ぶ側は基本的にカバー元のことが好きなのでそれでその後の活動の継続に繋がる可能性は増しますし応援になると感じられるのでは。

ファンの応援が自然に簡単にダイレクトに経済活動に繋がる仕組みの事例としても面白いですね。